龍言時間

初夏のryugonでのプロボノ体験

2度目のryugonへの訪問。今回は宿泊客ではなくプロボノ体験でお邪魔させていただくこととなった。
宿のスタッフの一員として働きつつ、客のひとりとしてラウンジや温泉でくつろぐ。
合間には本業である旅行会社の仕事も進めつつ、六日町の散策も楽しむ。

スタッフ、客、会社員、旅人。

1日の中で何度もゆらゆらと肩書を変えることが新鮮で、どの時間も居心地が良い。
ryugonでのそんな数日間の体験をリポートする。
◆初日
11:30からの客室清掃に参加するため、9:00前の新幹線で東京から南魚沼へ向かった。
前回訪れたときは大雪で、越後湯沢駅手前の長いトンネルを抜けた先はまさに川端康成の『雪国』の世界だった。今回はトンネルの前後で大きく景色が変わることもなく、新緑より少し色を濃くしたのどかな眺めが広がっていた。
越後湯沢駅から六日町へ向かう列車の中でふと窓の外を見ると、田植えを終えたばかりの田んぼの背景、標高の高い山々には今もわずかに雪が残っている。前回地元の方から教えてもらった「雪形」という言葉を思い出した。昔は暦のように山肌に残った雪の形を見て田植えや農作業を行ったと聞いたが、実際に風景として目に入ると、そんな雪国の暮らしがとてもリアルに感じられた。
六日町駅からryugonまではゆっくり歩いて20分。記憶の中の豪雪の風景と重ね合わせながら歩くと多くの発見があり、間違い探しを楽しむような気分だ。



◆11:30~14:30 プロボノ体験その1:清掃
プロボノ体験では1泊あたり5時間の業務を行う。日中の清掃業務には3日間参加させてもらった。クリーンキーパーの一員としてチェックアウト後の客室清掃とチェックイン予定の部屋の準備を行う仕事だ。制服に着替えて参加するので、他の宿泊客からは自分もryugonのスタッフとして見られることになる。着る度に気の引き締まる思いがした。

ハードワークだと聞いてはいたが、約3時間の客室清掃は言葉通りになかなかの体力勝負。清掃は2~3名ずつ数組に分かれて行う。1つの作業に何分、1部屋完了するまでに何分、といった目標が決められていて、まさに分刻み。その日のチェックアウト状況に応じて臨機応変に清掃ルートを変えることもある。複数の宿泊棟がある館内を連携しながらテキパキと回って行く。
このクリーンキーパーの方々のチームワークがとても素晴らしかったのが印象的だ。その日のリーダーはいるものの、年齢や性別、キャリアの長さも関係なく、対等な関係でチームが作られていた。各人の動きに無駄はないが、黙々と作業するというよりは和気藹々とした空気があり、ネイティブ同士の方言での会話が聞けるのも楽しい。



◆14:30~18:00:フリータイム
清掃業務のあとは、ディナータイムの皿洗いまで自由時間となる。
まずは清掃後の汗と汚れを流すべく、滞在中は毎日温泉を利用させてもらった。ちょうどチェックイン開始直後の時間帯になり、一番風呂を独り占めできることが多く、非常に贅沢な時間だった。
ランチ・ディナータイムが宿の業務になるので、食事を仕入れに行くのもこの時間。せっかくなら土地のものが食べたいと思い、六日町の「やましろや」というスーパーのお弁当やお惣菜によくお世話になった。坂戸山や魚野川の景色を楽しみながらの散歩は気分が良く、初夏の草木の香りが心地良い。
旅行会社の仕事を進めた日もあった。溜まったメールを一気に処理するが、清掃作業と温泉入浴後で脳内がクリアになっているためか、テンポよく片付けることができた。ドミトリーの自室だけでなくラウンジも使用できるので、気分に合わせて場所を変えるのも楽しみのひとつだ。

また、日によっては本業の方の打ち合わせでryugonスタッフの方とお話する時間を設けてもらった。自分もスタッフの一員として働かせてもらいながらオフィスにお邪魔すると、少し身内になったような気分になるのが面白い。客のようなスタッフ同士のような立場では、互いにざっくばらんに意見を出しやすく、新しい形の打ち合わせになると感じられた。
◆18:00~20:00:プロボノ体験その2:皿洗い
レストランでディナータイムの皿洗いを行うのが2つめの体験。無心になってひたすら食洗機に皿を並べたり、食器を拭いて片付けたりする作業にはメディテーション的な効果があるのか、個人的には楽しめた。ryugonで滞在している間にいろいろと湧き上がってくるアイディアやこれからやりたいことを、頭の中で整理する時間にもなった。

私は前回訪問時にディナーをいただいていたので、下げられてくるお皿から料理が想像できたが、皿洗いだけでは見えないものもたくさんある。せっかくの滞在でお皿だけ見て帰るのではもったいないと感じた。初めていらっしゃる方にはぜひ一度はお休みを取っていただき、宿泊客としてryugon自慢の雪国ガストロノミーを堪能してほしい。



◆20:00~:フリータイム
スケジュールの組み方にもよるが、皿洗いの仕事が20時頃には終わるので、遅めの夕食を取る場合には六日町の街へ繰り出すこともできる。スナックが多めではあるが、深夜まで営業している飲食店は想像したよりも多くあった。
温泉でまったりと過ごしたり、バーでお酒を飲んだり、ryugon館内でのんびり過ごすのもおすすめだ。
◆6:00~11:30:午前中の過ごし方
プロボノ体験では、ryugonのドミトリー客室に滞在する。ドミトリーと言っても海外のような大人数用の客室ではなく、ユニットバスも付いたシングルルームだ。窓にはカーテンではなく障子が使われているのがryugonらしく、朝は障子から差し込む光で自然と目が覚めた。
部屋にキッチンはないが、共用スペースに調理用品が揃っており、簡単な調理や電子レンジ・トースターでの温めなど自由に使うことができる。
2階奥の共用スペースには洗濯機と乾燥機も備え付けられているので重宝した。(※洗剤は持参する必要がある)
余談になるが、私は旅先で洗濯や掃除をして始まる朝が好きだ。その土地に暮らしているような気持ちを体感できるからだ。ドミトリーでゆったりと朝を過ごし、天気が良い日は魚野川沿いやryugon近隣の田園地帯へ散歩に出かけた。水田の稲はまだ早苗で、夏や秋にはまた違う景色になるのだと想像するのも楽しい。
旅に来たというよりも、住んでいるような気分が感じられるのが、ドミトリー滞在のメリットだと感じた。
滞在中は残念ながら雨も多く、外へ散策するには適さない日もあった。そんなときはラウンジでコーヒーを飲んだり、読書をしたり、時には終わらない仕事を片付けたりして過ごした。モーニングサービスのパティスリーは朝食やおやつにぴったりでとても有難かった。



◆プロボノ体験を通して
手配旅行業に従事する私にとって、ryugonで過ごした3泊4日は貴重な経験の宝庫だった。予約手配が終わった後、現地に着いてからのお客様の姿や、お迎えするスタッフの姿を目にする機会はほとんどないからだ。

新型コロナ禍で、旅の在り方は大きく変わり、旅行会社の役割にも変革が起きている。旅先での発見や体験に目を輝かせるお客様を間近で見て、「旅の楽しさを伝えたい、快適な旅のお手伝いをしたい」という気持ちでこの業界に足を踏み入れた初心を思い出すことができた。

また、一緒に働かせてもらったことで、お客様のために裏でも表でもノンストップで動き続けるryugonスタッフの方々の熱意や真摯さに触れることが出来た。このような素敵な宿にぜひお客様に来ていただきたいと感じると共に、安心して弊社のお客様をお任せできるという信頼感もより強まった。
一人の旅行者としては、初夏の雪国の美しさ、六日町という街の魅力を心から楽しむことができた。

一方で、行けなかった場所、見たかったものもまだ山ほどあり、ワーケーションではなく完全にバケーションで来たかったというのも本音だ。
次回は仕事で来るのか、休暇で来るのかはまだ分からないが、この居心地の良い素敵な宿にまた帰って来られたらと願っている。


ベルトラ株式会社
国内事業部 勝呂

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