ryugonについて

新潟・南魚沼。国内有数の豪雪地帯にひときわ目をひく荘厳な屋敷があります。上杉謙信の義兄で旧坂戸城城主、長尾政景公の菩提寺「雲洞庵」の末寺「龍言寺」跡地に建てられたことに由来し、「龍言」と名付けられました。
約1500坪の広大な敷地内にある建物は、旧坂戸城のあった国指定文化財の坂戸山に抱かれるように建っており、その大半が今から約200年前の文化文政時代の庄屋や豪農の館を移築したもので占められています。東北や新潟で見られる母屋から中門を突き出した「中門造」、居間と書院の間を篭に乗ったまま移動できるように造られた「篭通し」などは民俗建築を今日に伝える重要な役割を果たしています。
歴史的価値の高い建物ですが、長年、豪雪地帯の厳しい風雪にさらされてきたため現代の様式に沿った規格の見直しが必要になってきました。また、建物だけではなく宿そのものも、刻々と変化していく環境に合わせてリニューアルする時期を迎えたのです。そして、長く雪国文化とともに宿を営んできた実績ある越後湯沢の温泉旅館「HATAGO井仙」に経営を交代することとなりました。

龍言から ryugon へ

2019年夏、「龍言」は、日本一の豪雪地帯の風土を体感してもらうための宿「ryugon」として、新たに生まれ変わりました。
そこは、真白き世界から生まれる、みずみずしい自然やそこに暮らす人々、そして世界中からやってくる旅人との交差点。ランドスケープや建築、食、アート、アクティビティ、イベントなどで1日中雪の恵みを体感できる場。室内では、四季を通じて里山の静寂さを味わい、たおやかな時間を過ごすためのホスピタリティを提供いたします。「龍言」の記憶を残す建物と、そこに関わる人たちの笑顔こそが、雪国の未来につながる大切なものだとryugonは考えます。
毎冬、2メートル以上もの雪が積もり、雪解けの春には山に山菜が芽吹く。夏は青空を移す水田のきらめき、秋は黄金色の稲穂が風に揺れる。この土地の暮らしや文化は、そのようなめぐる四季のなかで営まれてきました。
この場所で出会うすべての人が、この果てなき永い時間に想いをめぐらせ、特別なひとときを過ごせますように。ryugonは、雪のくれた恵みに感謝し、旅人の感性と土地の文化を育んでいく宿でありたいと考えています。

雪を回生するホテル

ryugonは、旧龍言から受け継いだ歴史ある建造物を活かしながら、豪雪地帯の風土を体感してもらうための宿として、2019年に生まれ変わりました。克服すべき対象だった「雪」を、価値へ転換するために、建築や体験などを再構築。保全と活用が循環する森づくりを目指す「ryugonの森」プロジェクトや、宿とゲストの新しい関係を生み出す「さかとケ」もはじまりました。2023年10月には、宿と地域・環境との新たな関係をつくりだす総合的な取り組みが評価され、グッドデザイン賞をいただきました。

ryugon は単なるホテルにとどまらず、雪と向き合い、雪を再解釈し、雪の新たな価値を生み出すことで、地域や環境を回生するホテルとして進化していきます。

回生1-克服する雪から体験する雪へ

現代の雪国では、雪を克服するため、除雪や融雪などの雪を排除する技術が発達してきました。しかし、雪は雪国の生活の糧でもあり、食文化など豊かな雪国文化を作り出した恵みの元でもあります。私たちは、ゲストに雪を体感してもらうことこそが、大きな価値であると考え、建築や体験のデザインに取り入れてきました。それを象徴する場所のひとつが、ヴィラスイートへと続く廊下です。雪国の通りには2メートルを越す積雪でも歩くスペースを確保するための「雁木」とよばれる屋根がありますが、それにヒントを得て、壁に囲まれていた内廊下を、壁を取り払った外廊下へと変えました。雪国の常識には反していますが、ゲストに雪のなかの暮らしを体感してもらうためのデザインです。

回生2-人の森から生き物の森へ

ryugon の庭園に隣接した森は何十年もの間放置され、手付かずの状態でした。この森は、元々広葉樹の森に、杉が植林されていました。密になりすぎた杉は、土地の光を遮りながら大きく成長し、土地は一年中暗く、日の当たらない環境になっていました。庭園と森は、隣接しているにも関わらず分断しているような状態でした。
この森を本来あるべき姿に還し、森を招くことで、庭園と森が一体となった姿をつくりだしたい。そんな想いから、2019 年6 月に140 本の杉の間伐を行い、森の保護と再生を目的とした「ryugonの森」プロジェクトがスタートしました。森を還し、森を招くというランドスケープデザインの思想は、「もりをまねく」という絵本にまとめられ、客室に常備しています。
継続的に森の間伐や手入れをすることで、これまでほとんど成長の見られなかったサクラや楓などの広葉樹が生気を取り戻し、成長を始めています。森全体が少しずつ生まれ変わっていることを実感しています。そうしたプロセスをゲストと共有するために、森のアペリティフの時間を設けたり、間伐杉から抽出したアロマオイルを販売するなど、保全と活用を両立する取り組みを進めています。

回生3-もてなされる旅から共につくる旅へ

ryugon では、雪国の生活文化、周辺の豊かな環境を活かした体験をご用意しています。そうした体験を通して、地域の人と触れ合い、雪国文化に出会うことで、ゲストが気づきを得たり、見識を広げたりする機会を提供します。
新しい旅のあり方を提案する「さかとケ」というプロジェクトもはじまっています。宿で、ハウスワークを手伝いながら、ハウスステイする「家のような拠点」。そんな新たな宿のあり方を、ゲストと一緒につくりあげていく取り組みです。旅先に「ただいま、おかえり」の関係性をみつけることで、地域で暮らすような旅を提供します。
ryugon は単なるホテルを超えて、雪国の生活文化をプレゼンテーションする地域共生型ホテルとして、これからも旅を通じた都市と地域の新たな関係を生み出していきます。

ryugon プロジェクトメンバー

プロデューサー

井口智裕株式会社いせん代表取締役・一般社団法人雪国観光圏代表理事

家業である旅館を引継ぎ、2005年に「越後湯澤 HATAGO井仙」として第二創業。「宿は地域のショールーム」として作られたユニークな経営スタイルは多くの反響を呼ぶ。2008年には周辺7市町村で構成される雪国観光圏をプランナーとして立ち上げ、2011年には代表理事に就任。2018年には第4回ジャパンツーリズムアワードの大賞を受賞し、日本のDMOの草分け的存在として注目を浴びる。旅館経営者として経験と地域づくりの視点から、宿と地域が共生することで生まれる新しいツーリズムの世界を「旅館3.0」と命名し、その思想を具現化するために温泉御宿龍言の経営を引継ぎ、2019年にryugonを誕生させる。
クリエイティブディレクター

フジノケン株式会社N37 代表

新潟県津南町を拠点に活動。日本の地方の魅了を世界へ発信することを目指して、地域や企業のブランディングを担う。2017年に松之山温泉温泉整備計画でグッドデザイン賞、2018年に雪国観光圏のブランディングでジャパンツーリズムアワード大賞、アジア太平洋広告祭、東京インタラクティブアワードなど受賞多数。
龍言時間:雪国の古民家で、ホテルライクな宿泊を。
建築・内装 改修設計

蘆田暢人株式会社蘆田暢人建築設計事務所 代表

建築を中心に土木、まちづくり、エネルギーなどデザインの領域を拡張した活動を行っている。その土地の地勢・風土・文化などを建築的に解釈する「地誌学的建築」をテーマに掲げて設計を行う。2020年 ryugonでASIA DESIGN PRIZE、2018年 松之山温泉温泉整備計画でグッドデザイン賞、その他、これからの建築士賞、神奈川建築コンクール優秀賞など受賞多数
プランナー/コピーライター

朝比奈千鶴トラベルライター

「暮らしの延長線の旅」をテーマにライター、編集者として活動。旅先の自然や人の営み、文化に触れる旅を提案。自著に『Birthday Herb』(水戸 養命酒薬用ハーブ園 編/朝日新聞出版)、企画編集出版物に『巴里の空の下オムレツのにおいは流れるレシピ』(扶桑社)など。プランナー、アドバイザーとして、宿や映画撮影の演出、書籍製作などにも関わる。ryugonでは企画やWEBページのコピーで参加するほか、絵本『もりをまねく』(絵・伊藤祐基)を執筆。
ランドスケープデザイン

熊谷玄stgk代表

STGK代表。ランドスケープデザイナー。現代美術作家 崔在銀のアシスタント、earthscapeを経て2009年より現職。都市の大規模再開発から地方や郊外の再生計画まで人の暮らす風景をデザインしている。グッドデザイン賞など受賞多数。千葉大学、愛知県立芸術大学、東京電機大学非常勤講師。
ランドスケープデザイナー(植栽計画担当)

石川洋一郎TREEFORTE inc. 代表

自然の恩恵を受けつつ、人と植物が共に生きる環境を創造することをコンセプトに、多様な環境、植生、緑化技術の違いにおける条件に適応した「植栽デザイン」を主力とするランドスケープデザイナーとして国内外のプロジェクトに携わる。主な竣工案件に日野こもれび納骨堂、金城ふ頭駐車場、常葉大学静岡草薙キャンパス、ブランチ横浜南部市場などがある。
家具デザイン・家具制作

大島正幸ようび 代表取締役

岡山県西粟倉村で、「ようび」創業。世界的に事例の少ない国産針葉樹の家具のパイオニアとして知られ、国内外の個人宅からホテル、旅館、商業施設等の公共施設まで、その土地ならではの風景を生かしたデザインを生み出している。現在、家具やプロダクトのデザインへの深い見識を活かし、全国の大学や行政、民間と幅広い領域で学びづくりを手掛ける。福武文化奨励賞など国内外受賞多数。国立大学法人信州大学 特任講師。
ライティングデザイナー

東海林弘靖LIGHTDESIGN INC. 代表

光と建築空間との関係に興味をもち建築デザインから照明デザインの道に入る。1990年より地球上の感動的な光と出会うために世界中を探索調査。アラスカのオーロラからサハラ砂漠の月夜など自然の美しい光を取材し続け、光との出会いの感動を糧に人の心に作用する光をデザインする。Award of Excellence(IALD国際照明デザイナー協会)、日本照明賞(照明学会)など受賞多数。

雪国のエコロッジとして当館が紹介されています。

エコロッジと聞いて、どんな宿をイメージするでしょうか。アジアやアフリカなどの大自然のなかにある宿を思い浮かべるかもしれません。しかし近年、欧州を中心に「地域環境の保護」「地域社会への貢献」「本物の自然や文化との交流」に取り組む新しいタイプのエコロッジが注目されてきています。
「100年後も雪国であるために」という理念にもとづいて長年活動してきた雪国観光圏でも、約40のエコロッジ要件を定めて、雪国のエコロッジを世界に発信する取り組みがはじまっています。
当館の「自然環境の保全」「地域社会・文化への貢献」も紹介されていますので、エコロッジウェブサイトをぜひご覧ください。

雪国観光圏との関わり

新潟、長野、群馬の3県7市町村で構成される雪国観光圏は、雪国文化を地域独自の価値とした先進的なブランディングと官民連携ですすめるユニークな組織体制が評価されて、国内におけるDMOの先駆けとして多くの注目を受けてきました。この取組を次にステージにつなげるためには、雪国のブランド価値を体感させる「場」こそが必要だと考えるようになりました。そんなとき、旅館経営者である私のもとに「南魚沼市の老舗旅館である龍言の経営を引き受けないか」との打診がありました。 雪国の伝統的な家屋を移築して建てられた龍言は、国の登録文化財にも認定を受けた地域のランドマークです。 私は雪国観光圏のメンバー達とともに10年をかけて構想してきた「雪国文化」を軸として、この宿を再生できないかと考えました。それは同時に雪国観光圏にとって長年の懸案であった「雪国を体感させる場」が新たにできることにもつながります。16,000㎡の広い敷地と大小16の古民家が連なるryugonの再生は、私にとっては命がけの挑戦です。しかしそれは私個人の想いだけで始めるわけではありません。私は「宿は地域のショールーム」であるべきと考えています。ここ雪国魚沼のような小さな地域では、宿の経営方針で地域の未来へは大きく変わります。ryugonの挑戦は地元の生産者には新たな販路を用意し、地元で暮らす人達には地域の価値を見直すきっかけを作り、働くスタッフには共に未来を描くことができます。先祖が苦労してこの地に残してくれた大切な資源を次の世代により良い形で託すことこそ私たちの使命であると考えています。「100年後も雪国であるために」私たちの挑戦はまだ始まったばかりです。

株式会社いせん代表取締役 井口智裕

MISSION

この地には、約8000年前の縄文時代から続く、雪と共生しながら育んできた雪国文化があります。50年かけて廃れゆく古い建物を守りながら“豪農の館”という文化財をつくってきた龍言は、これからryugonとして雪国の財産を引き継ぎ、未来へと持続可能なものにしていきます。


豪雪地帯の暮らしの営みは雪のくれた恵みへの感謝から始まるもの。「旅人の感性と土地の文化を育む宿」を目指し、雪国文化の価値を世界に広く伝えていきます。



Local


食やアクティビティ、建築など地域に受け継がれてきた雪国文化を継承します。




Sustainable


夏は井戸水を使った冷房システムを取り入れ、環境負荷を少なくします。


国指定文化財である坂戸山の自然環境を復元する取り組みを行います。




Universal


多様なお客様のニーズに応えるため、旅館だけにとらわれない多用途性や多機能性を常に追求いたします。


会社概要

商   号 株式会社いせん( Isen Co.,Ltd. )
設   立 1952年10月
本社所在地 新潟県南魚沼郡湯沢町大字湯沢2455
代表取締役 井口 智裕
事業内容  宿泊施設、飲食業、小売物販業、旅行業、商品開発業
従業員数  52名(2020年3月31日現在)
ウェブ   http://isen.co.jp

ryugonメディア掲載履歴

商店建築 2019年11月

CREA 2019年12月
 
Discover Japan 2020年2月
 
CASA BRUTUS 2020年2月
 
The Newark Times Style Magazine 2020年2月
 
BAMBOO MEDIA 2020年2月
 
コロカル 2020年2月
 
一個人 2020年2月
 
婦人画報 2020年3月

ガイアの夜明け 2020年5月

Reservation

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